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心の悩み

ケーススタディ|逆流性食道炎

◇症状・経緯

60台の男性。初診の1年前の夏、仕事での飲酒後自宅にて深夜に大量に嘔吐。その後発熱し、急性胃腸炎との診断を受け、抗生剤を服用するも胃の不快感が残った。それが一ヶ月継続したため検査し、逆流性食道炎と診断を受け、その一ヶ月後の人間ドックで、食道癌と診断を受けた。

嘔吐の半年前に強いストレス事案が仕事で起こり、それが初診時まで1年半継続しており、しばらく続くとのこと。仕事では責任のある立場。

初診時の症状は、みぞおちの痛みと、胃もたれ、食欲不振、以前と同じ量を食べられない、脂っこいものが食べられない、深夜胃液が上がってきて目が覚める、喉のつまり感、など。また、食道癌の診断から検査を重ねており、病気に対する不安感も強い状況。

◇見立て

ストレスが胃腸の働きを抑えている(肝胃不和)のと、ストレスによる頭の緊張と相対的な下の弱り=肝血腎精の不足(上実下虚)、があるが、初診時は肝の緊張がメインの病理と判断して施術を開始。

◇治療と経過

肝の緊張を取ることをメインに施術すると、みぞおちの痛みが取れ、仕事をして痛みが戻り、また施術して痛みが取れる、という繰り返しをするうちにのどのつまりは無くなり、また食べられる量が増えていくも、夜間の胃酸の逆流と覚醒が改善せず、途中で下虚の補法を追加すると、急速に夜間の胃酸の逆流が収まり、覚醒もしなくなっていきました。またその頃、検査により癌ではないことが確定し、安心したことも改善の大きな契機となったと感じています。最終的に、発症前も元々ストレスがかかると胃痛を起こしていたことや、休日は楽な事などに思い至られ、最終的にうっすら残る胃の不調(ストレスや付き合いでの食べ物で悪化など)を受け入れられ、退職したらこれもなくなると理解されて、「仕事をしている間はこの胃腸と付き合っていって、悪くなったらたまに治療に来る」と決めて、治療を終了しました。

病を、病というのが言い過ぎであれば、自分の身体の弱い部分を受け入れて、それと付き合いながら生きると決心する事も、ある意味「治る」という事なのだろうと思わせてくれた症例です。

◇考察

この患者さんは、マラソンや海など、運動習慣があり、体力もある方ですが、年齢とハードなお仕事、また病気に対するストレスとそれによる消耗で、弱っている部分も見受けられました。

ここで、緊張と弱りとどちらがメインの病理かを判断し、まずは緊張を取り、緊張が取れてきた時点で弱りをフォローして、功を奏した症例だと思います。緊張がメインの病理なのに補っても症状は取れませんし、また緊張が取れてきたのにずっと同じ治療をしても、そこで症状が改善しなくなったり、寧ろ逆に弱らせてしまうこともあるため、毎回とはいかずとも、途中途中でその時点のメインの病理がどちらなのかを確認していく必要があります。

また、下を補うことで、上の緊張を取る、という施術戦略もあります。

本来物体は三角形のように下が広いと安定します。人もこれと同じで、運動をすることで下半身が安定すると、上は緊張する必要が無く力を抜くことが出来ますし、余計な事を考えたりせず、また頑張りすぎず仕事を適度にすると、上の緊張が小さくなり、体調が良くなります。

バランスが取れている

しかし現代人は、ストレスも多く目や脳ばかり使っており(上が緊張)、また運動不足なため下が弱り、逆三角形のようなバランスで生きている方がとても多いです。こうなると、逆流性食道炎は勿論、足下がふらついたり、肩こり首こりは酷くなるし、手足が冷えて上が火照る更年期のような症状が若くても起こりますし、不眠症、めまい、嘔吐やパニック障害の方も、この様な逆三角形のバランスの方が多いです。

バランスが悪い

その様な場合、上の緊張を取るか、下を強化するかという戦略が考えられますが、それを、その患者さん毎に体力がどれくらいか、ツボの状態はどういう感じかを確認しながら、施術していく、ということになります。

逆流性食道炎と一言で言っても、この方と同じ施術や戦略でいつも上手くいく訳ではありません。もしストレスより食べ過ぎが原因であればそれを対象とした施術になります。それが当院の「オーダーメイド治療」なのです。

本山 裕子

本山 裕子

鍼灸師 ‐婦人科系、内臓系、心のお悩みが得意分野です。

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