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自律神経系(不眠・疲労感・気分障害・胃腸障害)

ケーススタディ|目の痛み・閃輝暗点・(多夢)

◆症状・経緯

目のひどい痛みと閃輝暗点(せんきあんてん、突然視野の中にギザギザ・キラキラとした光の波ができ、次第に広がって暗くなり見えなくなるという現象)が出るとのことで来院。

経過として、数年前より仕事のストレスで悪夢が多くなり、寝言も出ていた。
その後、ストレスが減って治まっていたが、数か月前より同じく仕事のストレスが多くなり、その頃から目の痛みが出現。最近になって目の痛みが酷くなり、閃輝暗点も出現するようになった。

数か月前に目の痛みが出た前後から、悪夢や寝言に加えて白髪の増加やパサつき、抜け毛が増えた。
また生理の量は元々多く、主訴発症前後で変わらないものの、生理後に目の痛みが増悪していた、とのこと。

睡眠が取れなかった日や職場でストレスがあると夕方以降に悪化し、逆に、睡眠が取れた日や休日、朝は楽とのこと。

読書など目を使っても悪化はしないが、閃輝暗点は目の痛みが増悪し出るとのこと。特にストレス下で出るそうです。

◆見立て・施術

閃輝暗点は、東洋医学的には主に熱が原因と考えます
しかし、どういう熱なのかを判断して施術に移らなければなりません。考えられる熱の原因は以下の2つ。

①ストレスによる緊張が継続して熱化したもの
②貧血など体を構成する水分の減少により熱を冷ますことができなくなって熱化したもの

ストレスが継続すると熱がこもっていきます(①の病理)。
一方で、熱は血も消耗するため、次第に相対的な血虚(東洋医学的な貧血で、西洋医学的な貧血とは概念が違います)が酷くなります。
そうして②の病理に移行していくのです(他にも血虚の原因はいろいろありますが、この方の場合はそれらの可能性はありませんでした)。

この方の場合、問診でお話しした感じはお元気なのですが、全身のツボや脈、舌などを観察したところ、実はかなり弱っていることが判明。髪質の変化や生理後に主訴が悪化していることなどから②の病理と判断して、血を補う施術を致しました。

◆施術

初診時、目の痛みは減少したものの、その週はストレス下で閃輝暗点が出たとのこと。一週間おきの施術で、2診目は、初診と同じ施術に加えて、熱を取るツボも加えたところ、それ以降は目の疲れや軽い痛みは出るものの、閃輝暗点は出現しなくなりました。

◆考察

閃輝暗点は片頭痛に付随して起こることが多く、慢性的な頭痛が継続しているうちに酷くなって出現する症状です。
治療に時間がかかるかなと思っていましたが、思っていたより短い期間で主訴が出現しなくなりました。

この方の場合、目の痛みがまずあり、それが継続するうちに閃輝暗点が出現しました。おそらく、ストレスによる熱がベースにあり、相対的な血虚が数か月の間に進行していき次第に熱がこもり、閃輝暗点に移行したのだと思います。①+②の病理ですね。

まず初診時は、相対的に血虚(②)がメインと考えて血を補うツボを取りました。
それにより血は増えて目の痛みはマシになったものの、元々はストレスの緊張が原因だったので、その緊張からくる熱が残り、閃輝暗点が出現しました。

そこで、2診目以降は熱を取り除く施術を追加。それが上手くいき、閃輝暗点も出現しなくなったのだと思います。

また熱が冷めていくと、睡眠の状態も良くなります。この方も、施術により睡眠状態が良くなっていきました。

それも、主訴緩解のキーポイントになったのではないかと考えています。

◆補足:東洋医学的な睡眠の捉え方

では東洋医学的に、睡眠が体にどう影響していると捉えているのでか、という点についても説明したいと思います。

東洋医学的に、夜は陰の時間帯で、陰の時間帯には体内の水分=陰血が増え、それにより日中ストレスなどによってたまった熱も消火されるサイクルになっている、と考えます。

しかし、物理的に睡眠時間が短い、あるいは睡眠障害によりちゃんとした睡眠が取れないと、日中たまった熱が冷める機会がどんどん失われ、体が熱に傾いていってしまう。

この方の場合、ストレスで夢が多くなり睡眠の質が悪化しているうちに水/血が減り、相対的に熱を冷ます機会が失われ、目の痛みが出現し、閃輝暗点も出現したと考えています。

鍼灸による「血を増やして熱を冷ます」施術後で、主訴が軽減しました。
また、それに加えて夢が減り、睡眠の質が良くなったので、さらに水/血が増えて熱が冷め、主訴が出にくくなったのでしょう。

「多夢」は主訴ではありませんでしたが、この方の場合、主訴発症に大きく関与していたというわけです。

良い睡眠は健康の元ですが、ストレスのせいで睡眠障害になっていると長く寝ても疲れは取れないし、熱もこもっていく。そうすると、いろんな症状を引き起こします。

まずは良い睡眠を取る工夫をしましょう。
もしそれでも、夢が多かったり入眠出来ない、などの症状でお悩みの場合は、ぜひ春宵堂治療院へお越しください。

本山 裕子

本山 裕子

鍼灸師 ‐婦人科系、内臓系、心のお悩みが得意分野です。

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