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自律神経系(不眠・疲労感・気分障害・胃腸障害)

ケーススタディ|口が渇いて味がしない

◇症状・経過

40代女性。2023年冬にコロナ感染と引っ越しが重なって、疲労の上に感染に対する心配があった。コロナの症状そのものは、高熱と大量の発汗が数日継続し、のどの痛みもあったが聞いていたほどではなかったとのこと。治癒後はだるさが継続し、その間に、元々弱かった胃腸の症状が出て食欲も減退し、あまり食べられないしすぐもたれる状態が継続。コロナ後遺症に対する心配からのストレスも強かったが、段々体重も減ってしまって、次第に口の渇きが酷くなり、最近になって味も感じにくくなってきているとのこと。病院での検査では、胃腸は問題ないとのことで、口の渇きに関してもちょくちょく水を飲んで下さいとのことだったが、とにかくだるさが辛いという事で、ご家族のご紹介で来院。コロナ感染から半年ほど経過した時期の来院でした。

◆見立て・施術

詳細な問診と脈やツボの観察の結果、全体的に体が弱っており、全体的なエネルギー量が低下している(気虚)と同時に、水気(陰血)も無くなってビーフジャーキーのようになり、主訴であるだるさだけでなく、口が渇いたり胃腸の弱りが出ていると判断し、気も水(陰血)も補うツボを選穴して施術しました。
施術中に唾液が出る感覚があり、すっきりして少し元気になった気がすると驚いていらっしゃいました。そのような施術を繰り返すうちに、口の乾燥や胃腸症状が和らぎ、元気になってきました。また途中からは緊張を取る選穴で、体調が良くなるようになっていきました。

◇考察

口が渇く、のどが渇くという症状は、主訴でなくても多くの患者さんが訴える症状の一つです。
東洋医学的には、①陰血が不足して起こる場合と(虚)、②緊張やストレス、感染性の病などによって体に熱がこもり、熱のせいで水が焼かれたり、口や喉まで潤いが届かず 「渇く」症状があちこちに出ている場合(気滞や実熱・血熱)③何らかの原因で胃腸の機能が落ちている場合 の三つに大きく分かれます。今回のケーススタディの場合は①と③両方併存していたと思います。

また、味がしない、というのは口の渇きとは別の病理で、東洋医学的には、胃腸の状態を反映していると考え、これも胃腸が弱っている場合と、何らかの原因で胃腸の働きが阻害されている場合に大きく分けられます。

この方の場合は、気血や胃腸が弱り、口渇して味がしなくなっていました。しかし、弱っている原因は単にコロナで高熱発汗しただけでなく(そうすると感染直後に症状が起きるはずです)、その後数か月にわたって様々な症状が改善しないことによる不安・ストレスから、緊張→停滞して全体的な症状の悪化に拍車をかけたと思われます。つまり、「弱り(虚)だけでなく緊張(実)もある」ために複雑化し長期化し、その過程で口が渇いて味がしないという症状が出てきていると考えられるわけです。

施術戦略の定石として、緊急性の高いもの、重症度の高いものから施術していかなければならず、この方の場合は結構弱っていたため、まずは補う施術をして、体力が持ち直してきた段階で、緊張を取る施術に切り替えていきました。もし、体力がまだ結構あって、緊張からくる停滞や熱の比重が重いと判断すれば、緊張や熱を取る施術から始めるわけですが、長期化して複雑化しているとその判断が難しくなっていきます。

何か体調が悪いが、西洋医学的には問題が無く、でも生活が辛い、という場合は、その辛さや不安から体の状態が複雑化することがおおいので、もし何か不調でお悩みの場合は、余り放っておかず、早めにお近くの治療院へ行かれることをお勧め致します。京王線沿線や調布にお住まいの方は、ぜひ春宵堂治療院へお越しください。

本山 裕子

本山 裕子

鍼灸師 ‐婦人科系、内臓系、心のお悩みが得意分野です。

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