灼熱脚症候群=バーニングフィート症候群の原因と対策は?
気候変動で酷暑続きの夏でしたが、先日それに関連して、テレビで「灼熱脚症候群の症状って?」「バーニングフィート症候群とは?その原因と対処法は?」という内容を放送していました。中年以降の女性に多い、足が火照って眠れない、という症状のことを指す病名なんだそう。
灼熱脚症候群の原因は
灼熱脚症候群の原因としては以下のようなものが挙げられています。
- 夜、痛みや疲労物質が足に集まってきたり、足がむくんできたり、うっ血し、灼熱感が出る
- ・寝る時は深部体温が下がらないと熟睡できないが、深部体温を下げる代わりに熱が四肢末端に行く
- ・夏があまりに暑いので、身体に熱がこもってしまい、温度調節のために四肢が熱くなる
西洋医学的、科学的に理由をはっきりさせるのは、難しそうな印象ですね。
灼熱脚症候群の対策としては「足の裏のマッサージや、足底に湿布を貼って血行を一時的に良くしたり、抗炎症作用のある薬を服用したり、、、」等が挙げられていました。
灼熱脚症候群を東洋医学的に考える
実はこの報道を見て驚きました。東洋医学的には、灼熱脚症候群は原因もはっきりしており、古典でもちゃんと定義づけられた症状だし、だからこそ治療法もはっきりしているからです。
◆原因
まず、手足のほてりは、東洋医学的には「五心煩熱」と言われます。「五心」とは両手掌(二)両足底(二)と胸(一)(足して五)のことで、その五か所が火照る症状を言います。
五心煩熱の原因は、「陰虚」とされています。
東洋医学は大まかに人体や自然そのものを陰陽で捉えますが、「陰虚になる=陰が減る」と相対的に陽が余る。そのため余った陽気=熱が、陰の部分に漏れ出る形で火照りが出ると考えているわけです(掌と足底、胸腹部など前側は陰で、腰背部や手の甲足の甲など日焼けする部分、後ろ側を陽と考えます)。
◆なぜ40代以降の女性に多いのか
ぴちぴちの赤ちゃんがシワシワのおじいちゃんおばあちゃんに変化していくのが老化と考えると、つまり老化とは体の水気が無くなっていくこと(つまり陰虚傾向になっていく*)。その過程に更年期があり、水の減少による症状が表面化する時期です。そして、水が減る⇒陰虚傾向になるため、五心煩熱、つまり手足の火照りが出やすい。東洋医学的には老人に多い症状とされているのです。
なぜ女性に多いのかというと、体感として筋肉量が関係しているように思います。筋肉は血を沢山保持できます。血はつまり水。男性は女性に比べて筋肉量が多いので、陰虚になりにくいのでしょう。
◆なぜ夏に多いのか
報道を見ていると夏に多いとのことでした。これは、一つには暑さで汗を沢山かいていることも原因だと思います。汗をかくと、汗は血から出来ていますから、汗をかきすぎると陰虚傾向になってしまうのです。つまり酷暑は陰虚を促進して老化を速めてしまう可能性があり、じつはそれが科学的にも明らかになりつつあります( 猛暑で老化が進むわけ 最大14カ月も )。
もう一つの原因としては、今年のような異常な暑さやストレス、あるは冷房によって熱がこもり、更に熱によって水が焼灼されて減ってしまうことも原因だと考えられます。ただ、臨床をしていると特に夏に多い症状という印象はなく、冬でも熱がこもれば同じ病理で手足の火照りは起きます。東洋医学的に陰虚が原因なのですが、原因はどうあれ陰陽のバランスが崩れて陽が余れば、同様の症状が出ることはあるのです。つまり、陰虚が無くても、単に熱がこもって手足の火照りが出てしまう場合もあります。
東洋医学的な施術と対策
陰虚が原因の場合は陰を補う施術をします。熱が原因の場合は、熱を漏らす施術もする必要があります。
対策としては、まずは陰を守るという事。これは水をがぶがぶ飲む、という事ではありません。陰を守る食生活や生活習慣が大事です。
陰を補う食物としては「豆腐・豆乳・白きくらげ・白ごま・ゆり根・れんこん・長いも・豚肉・いか・ほたて」など。豆腐や豆乳が入っていますが、エクオールが更年期に効くのは、東洋医学的に解釈すると陰が補われるんだろうなと思っています。プラセンタが効いたという人もいますから、赤ちゃんの栄養である胎盤も、陰を補う効果が高いのだと思います。
生活習慣としては、やはり睡眠と運動が大事です。
よい睡眠は陰を補ってくれます。ですので、ちゃんと寝ると翌朝は化粧ののりが良くなったり目や口の乾燥が改善したりしますね。これは陰が補われ全身が潤うからです。
また、運動をすると筋肉がつきますが、筋肉は血=陰を保持してくれますし、運動はめぐりを良くしてくれますから、胃腸の働きもよくなり、消化吸収が促進されて陰が補われます。
患者さんにも、手足の火照りを訴える方は特に更年期以降の年代で、やはり女性に多いです(*1)。そして、鍼灸施術や生活習慣の見直しで改善する事は多い。
かく言う私も、二年前くらいは夜間足から湯気が出るくらい熱く、金属など冷たいものに足を押し付けたりしていました。それも、鍼灸と筋トレで改善し、最近はそこまでの火照りは出なくなりました。
灼熱脚症候群=バーニングフィート症候群でお困りの方は、是非鍼灸治療も試してみて下さい。京王線沿線や調布の方は春宵堂治療院へお越しください。
*陰が減ってしわしわになっていくのですが、年を取ると結局陰陽両方減っていきます。陰だけが減る、というわけではありません。
*1 若い方でも、熱が余り過ぎて五心煩熱のように手足や胸が火照る方もいらっしゃいます。必ずしも陰虚だけが原因ではありません。