春宵堂治療院 2025年8月の休業日のお知らせはこちら

東洋医学や鍼灸について

6年間続く原因不明の「気管支喘息」②東洋医学的見解とは

前回のブログでは、6年間原因不明の気管支喘息に悩んで来院された女性のケースを取り上げましたが、今回は、東洋医学が「喘息」をどう捉えているかと解説します。

◇喘息は肺を治せば良いのか!?

東洋医学的に、喘息の病の位置は肺。それは西洋医学的にも同じだと思います。
しかし東洋医学の凄いと思うところは、他の臓腑との関係で考えていくところです。

咳に関わる臓腑

肺の機能はいろいろありますが、なかでも重要なのは空気を吸い込むこと。
特に下のベクトルが働くことが正常な肺の機能です。これを「粛降作用・降気作用」といいますが、何らかの原因でこの作用が働かず、上のベクトルが働くと、咳が出る、と考えます。

例えばストレスで肝が興奮すると「気逆」という現象が起き、下に行くべきものが上に向かいます。これが胃に影響すると嘔吐や吐き気となりますが、肺に影響しても咳や息苦しさ、呼吸の浅さなどが出ます。

他にも肺の機能そのものが弱ったり、肺の機能をアシストしている腎が弱ったりしても、下のベクトルが弱くなって咳がでたり呼吸が浅くなったりします。

また風邪を引いてウイルスなど外敵を追い出すための咳、痰などを排出するための咳もあります。

痰に関わる臓腑

東洋医学的に痰は、何らかの原因で水が上手くめぐらず、停滞して濃くなって痰が出来ると考えます。水の循環にはいろんな臓腑が関わっていますが、肺も水を全身に散布する働きがあり、その肺の機能が落ちることで痰が産生される場合もあります。

また、「痰は脾(腸)で産生され、肺にたまる」※、とも言われており、痰が出る位置は肺でも治療すべき場所は脾、つまり胃腸である、とする考え方もあります。※痰は肺だけでなく全身にたまる可能性があります。

前述のケーススタディの場合は、飲酒量が多いことが痰の産生に関わっている可能性が考えられます。

もちろん、尿を排出する膀胱腎臓も水の循環に関わっていますし、「三焦(さんしょう、五臓六腑のひとつ)」という、東洋医学独自の腑も、水の循環に大きく関わっていると考えます。

また熱を冷やすために水が集る、という考え方もあります。ケーススタディの女性の場合、全身が熱いですが特に上焦部、肺と心に顕著に熱が有り、その熱を冷ますために水が集ってしまっていたとも言えます。飲酒や甘いものなど飲食も原因の一つだと思いますが、それをコントロールしても痰が残るため、熱も痰産生の可能性の一つなのではないかと思っています。熱は喉などの粘膜や舌や目、肌などを乾燥させることもありますが、逆に水を呼ぶこともあるのです。

また、熱が強いと痰の粘性が高くコロコロした黄色や緑色の痰が出ます。そして、熱が冷めてくると白い色に変化して粘性もどろどろしたものからさらさらしたものに変化していくのがセオリーですが、この方の場合も、そういう変化をしています。

◇なぜ夏と冬両方で悪化するのか?

前提として鍼灸施術において、どういう状況で症状が悪化するのか、あるいは軽減するのか、という情報は、病の原因(弱っているのか緊張しているのか、何か邪実があるのか)などをはっきりさせるためにとても重要です。

そして外界の変化で体調が悪化する場合、体内も外界と似たような状況である、と東洋医学的には考えます(内外合邪)。例えば、寒いと悪化するのは身体が冷えているからだ、と考えるのが通常です。同様に、梅雨の気に体調が悪化するのは体内に湿気が多いからだ、と考えます。

しかし、この方の場合は、お身体全体の観察、例えば舌の色や各所ツボの反応などから熱が原因である、と判断して施術して上手くいっています。ではなぜ寒いときに悪化するのでしょうか?

実は熱がこもっている方で寒い時期にに症状が悪化して辛くなる人は多いのです(もちろん、冬になると症状が改善する人もいます)。これは、寒さで身体の表面がふたをされ発散されなくなるため、熱が内に逃げて逆に火力が強くなるからです。イメージとしては、表面は黒いけど中の温度が高い炭火のような状態といえばわかりやすいでしょうか。寒い時期でも熱を冷ます施術をしたら効果がでることが多いすし、運動して汗として熱を発散させるとスッキリして症状が軽くなる方も多いです。半身浴も良いですね。

◇西洋医学と全く異なる喘息治療

今回のケーススタディでは、喘息の原因は主に熱と痰でした。関わっているのは肝と脾。

冬に沖縄に行くと喘息症状が和らぐ、という症例も聞いたことがありますが、これは冷えが原因の喘息だったのでしょう。過度な房事(性行為過多)で喘息になったという症例も聞いたことがありますが、この場合は原因が腎虚だったそうです。

西洋医学的には気管支を広げて痰を減らす、場合によってはステロイドや免疫抑制剤で炎症を抑える、など、治療のターゲットはあくまでも肺。しかし東洋医学では、詳しく問診をし全身を観察して、さまざまな臓腑、表裏寒熱虚実など想定される原因の中からターゲットを絞ります。

西洋医学的な治療で緩解、あるいは治癒している方がほとんどだと思いますが、それで変化が見られない方は、東洋医学的な施術を受けてみるのも一つの方法だと思います。

鍼灸治療は喘息も得意としていますので、西洋医学的になかなか改善しなくて不安だという方は、ぜひお近くの治療院に行ってみてください。京王線、調布近辺にお住まいの方は春宵堂治療院へお越し下さい。

本山 裕子

本山 裕子

鍼灸師 ‐婦人科系、内臓系、心のお悩みが得意分野です。

関連コラム

最近の記事

  1. 6年間続く原因不明の「気管支喘息」②東洋医学的見解とは

  2. 6年間続く原因不明の「気管支喘息」①見立てと施術方針

  3. 『筋ホルモン マイオカインの威力』を読んで