【2024年9月の休業日】9月29日(日)は休業します。また、9月1日から営業時間をサマータイムから通常営業時間に戻します。

養生(セルフケア)

猛暑による病理

暑さは身体にどんな変化をもたらすのか?

ここ数年夏の暑さが酷いですが、今年は特に酷いです。患者さんともよくお話するのが、年々暑さが酷くなっているのか、或いは自分が歳を取っていっていて、暑さに弱くなっているのか分らないけど、とにかく年々夏がしんどくなっているということ。これからずっとこんな夏が続くなんて、ほんとうにうんざりしますね。

さて、暑さは私達の身体にどの様な影響を与えているのでしょうか?

①血虚陰虚

暑いと汗をかきますが、東洋医学的には汗は血から出来ている、と考えます。そのため、汗をかけばかくほど、血虚(貧血)となってしまう。

そうすると口が渇く眼が乾くなどはもちろんのこと、抜け毛が多い、などという症状を訴える方もいらっしゃいます。東洋医学的には髪は血から出来ていると考えているので、夏の抜け毛は、汗のかきすぎによる血虚が原因、と言う側面があるわけです。

これは、元々身体が弱っている人だけでなく、体力があっても、元々熱がこもってそのせいで血を消耗していた人、また私のように更年期以降で身体が乾燥傾向にある年代の人にも起こりやすい症状です。

②気虚

暑さは東洋医学的には「暑邪」という邪気とされ、気を消耗するとされています。そのため、気が消耗することにより「気虚」となるわけです。前述の血虚とも関連してきます。血は気の乗り物、とされ、血がなくなると、乗り物が無くなった気も居場所がなくなり気虚となる。血虚と気虚は影響を与えあい、同時に起こるのです。

暑邪そのものが気を消耗し、また汗をかくことで血が消耗し、それによって更に気を消耗していく。

気虚になりますと、だるさや無気力、消化機能の衰えや息切れ動悸などが起こってきます。これは、元々身体が弱っていた方がなりやすい症状です。

③熱による症状

前述の二つ「血虚と気虚」は、エネルギーが衰えてしまっている病理ですが、これは熱がこもって症状が起こっている「実」の病理です。体力があり、元気な人がなりやすい状態とも言えます。また、元々熱がこもっている方の場合、暑い夏は更に熱がこもってしまって、このような状態になってしまっている方が多い印象です。

症状としては、睡眠障害やブレインフォグのような頭がボーッとする症状、イライラや気分の落ち込み、めまいや、また胃腸症状も。熱は上に向かう性質があるため、ベクトルが上に向かい、気も上に突き上げますが、食べ物は食道を通って肛門まで、ずっと下に向かっていきますから、熱の上のベクトルがそれをさえぎるようです。結果として、食欲がない、胃がもたれやすい、便秘などの症状がおこるのです。また、炎症性の症状も起こりやすく、胃腸炎や皮膚の炎症、アトピーの悪化などもよく見られます。

③以上三つの症状に「冷房」の寒邪が侵襲・・・

さて、現在は冷房をかけないと命が危ないレベルの暑さである訳ですが、健康を守るはずのこの冷房が、更に体調を悪くさせる場合もあります。西洋医学的には、急激な気温の変化が自律神経を失調させる、と説明していますが、東洋医学的には、

・体表が冷気によって蓋をされて逆に熱がこもってしまい、③の症状が強く出てしまう。

・また、冷房による「寒邪」も気滞を起こしますから、元々気滞がある人はそれが酷くなり、肩こりや頭痛、生理痛なども出て来てしまう。

・②についても、それで無くても気虚となっているわけですから、冷やしすぎると陽虚に進んでしまうことも。陽虚に進んでしまうと、気虚の症状に加えて下痢や食欲不振が酷くなったり、頻尿や逆に浮腫、身体の冷えや寒気なども出て来てしまうでしょう。

また、①②③が複合的になって夏バテとなっている人も多いです。胃は冷えているのに熱がこもって胸がざわざわする。熱で火照るし皮膚も痒いのにお小水が出なくてどんどん浮腫んでくる、など。この場合は、必要な臓腑を補いながら、熱や緊張を取っていきます。

どうすれば良いのか??~とにかく睡眠と普段からの運動!!

言わずもがなですが、冷房を上手く使っていかなければなりません。ここまで気温が高くなってしまうと、室外機から熱風を吐き出し更に温暖化を加速していると思われるクーラーに疑問は感じますが、つかわないと命の危険があります。熱中症だけでなく、暑さで眠れないことで②の気虚となりやすくなってしまいます。

まずは、夏だけでなく、他の季節にちゃんと運動を習慣化して体力をつけること。運動を習慣的にすることで、筋肉が付きます。筋肉は、西洋医学的には水(血)をため込みますから、①の血虚陰虚にもなりにくくなります。

また運動は気のめぐりをよくするため、熱もこもりにくくなります。これが③も予防してくれます。

そして、ちゃんと睡眠をとること。これは①②気虚と血虚両方を予防してくれます。

安眠にも、冷房は必須。自分に合った設定温度を探して、扇風機なども使いながら、ちゃんと寝ること。タイマーを設定して暑くなって目が覚めたらまた付ける、という使い方をしている人も多いのですが、付けっぱなしにして中途覚醒を少なくした方が、身体には良いと思います。

最後に私達がどうしているか。

一人は、体力が比較的無く、暑邪により気虚血虚になりやすいため、夏は3ヶ月だけジムに入会して運動しています。他の季節は外でジョギングや筋トレをしています。そして、食べ物はなるべく温かいものを取り入れつつ冷たいものも食べる。冷たいものだけになると、下痢になったり胃もたれや全身のだるさが出てしまうためです。

もう一人は、かなり体力があるため、夏も昼間からジョギング。そして朝から晩まで冷たい飲み物をごくごく飲みます。元々熱体質なので、冷えすぎるという事が無いのです。冷たい食べ物飲み物で身体の具合が悪くなったことは一度もありません。

以上、人によって健康法は様々。ネットや本の情報を鵜呑みにせず、自分はどんな体質でどんなことをすれば良いのかは、自分の身体に聞いてみましょう。

以上、酷暑の病理と対策でした。

何か自分に出来ることは。。。となると、食べ物か自宅でのお灸の場所を教えて欲しい、という場合が多いと思いますが、やはり運動と睡眠が一番長期的な効果がありますし、それが出来たら治療院での治療が必要なくなる方も結構いらっしゃると思います。他のブログでも書いていますが、夏に備えてだけでなく、老化に備えても貯筋、大切です!

ただ、夏バテしやすくてどうにかしたい場合でも、上記の三つのどれなのか、或いは別の病理があるのか、自分では分らないしどうしたら良いか分からない場合も多いと思います。そういう時も、治療院に通うことで自分の体質に対する理解が進みます。何か不調がずっとあるけどどこに行っても原因が分らず、対策もしようがない、と言う方は、症状の緩和だけでなく、自分の体質を探るために、当院のような治療院の門を叩いてみるのも一つの方法です。自分の体質を知って何が出来るか学ぶことは、貯筋と同じく生涯の財産になるはずです。

本山 裕子

本山 裕子

鍼灸師 ‐婦人科系、内臓系、心のお悩みが得意分野です。

関連コラム

最近の記事

  1. 腰痛ケーススタディ⑩|仙腸関節のズレによる臀部から下肢にかけての痛みと痺れ

  2. ケーススタディ膝の痛み②|膝痛で正座が出来ない

  3. ケーススタディ|肩の痛みと腕の痺れ