◇主訴・経過
「若いころから胃が弱いんです。」
そうおっしゃる60代の女性が来院されました。痩せ型で体力の低下を心配しながらも、食べると胃もたれや吐き気が起こる。病院や漢方も試してきたけれど、はっきりした効果は感じられなかったそうです。
丁寧にお身体を診ていくと、見えてきたのは“胃の弱さ”そのものではなく、慢性的な緊張。
長年「胃弱」と思い込んできた症状の本当の原因は何だったのか――その一例をご紹介します。
主訴~長年の「胃弱」をなんとかしたい
60代の女性。元々痩せており、体力が弱りそうで痩せたくない。なので、食べたいのだが、たくさん食べられないし、食べると胃がもたれたり気持ち悪くなったりする。
病院にはあちこち行っており、いろんな薬を処方されるが全然効果がなく、漢方薬もいろんな種類を試したが効果を感じたことがない。引っ越をしてまた少し悪化しており、どうにかならないかと来院されました。
若いころから胃腸は悪かったが、年を取って悪化している感じがするとのこと。子育てが大変で、そのストレスがあったときが一番悪かったかもしれないともおっしゃっていました。今はお子さんたちも自立されています。
観察~胃弱の真の原因は「緊張」
60代ということもあり、弱っているところはあり、見た目も、ご本人の訴えも、虚弱という感じ。
しかし、脈やツボの反応など、お身体全体を観察した結果、主訴の胃もたれや胃の機能が低下した症状は、胃弱ではなく、緊張から来ていると判断。
週1~2回のペースで緊張を緩める施術をしていき、8回の回数券を使い切る頃に改善が見られました。
考察~胃弱はご自身の思い込みのケースも
結果的にこの方の胃もたれの症状の原因は、胃弱ではなかったことになります。むしろストレスによる緊張が強く、そのせいで胃腸の機能が制限されていたのです。
自分で体力がなく虚弱だと思っている方は多いのですが、お困りの症状の大本の原因は緊張である場合は結構あります。
「服薬履歴」が施術方針の決め手
この方の場合、見た目が痩せていていかにも虚弱という感じでした。それでも緊張を取る治療をしたのには、脈が元気だったりツボの反応がしっかりしていたのもありますが、服薬履歴も施術する際の大きな助けになりました。
というのも、補剤、つまり胃腸を温めたり補ったりする漢方薬ばかりが何種類も処方され、全部効果を感じなかったというのです。補ってもダメだったというは、つまり何らかの原因で停滞しているからではないか、と察しがつきます。
補う漢方がダメなら? 病の本質を見抜くには
法律上薬剤師の先生は触診ができませんから、患者さんの見た目や訴える言葉で処方されます。この方のように、虚弱だというマインドセットの患者さんの場合は、それに沿って主訴を訴えますから、補う漢方を出すことになるのではないかと思いました。
患者さん自身も東洋医学を勉強されいて「私は腎虚ではないのですか?」「脾虚ではないのですか?」とおたずねになりました。その都度「腎虚も脾虚もありますが、今回の胃の症状についてはそれは原因ではないと思います。今回の胃もたれの原因は肝だと思います」とご説明していました。
全体を見て弱っているところがあったとしても、それが主訴に関わっていなければ施術対象になりません。病の本質を見抜くためには日々の勉強が大切だという事を実感したケースでした。
緊張の原因~治らないことに対する不安
最後にこの方の場合は何が緊張を生んでいたのでしょうか。
お子さんたちは自立され、経済的にもある程度余裕がある。夫婦仲も悪くはない。引っ越しによる環境変化というストレスはあるにせよ、その前から胃の症状は継続していたわけです。まったく運動習慣がないことによる停滞はあるにしても、それ以外は特に思い当らないようでした。
考えられるのは、色んな病院や漢方薬局、鍼灸院に行っても症状が全く改善しないという不安。
特にストレス源が無くても、不安症など性格的なもので緊張が取れない方、あるいは気温などの環境変化で緊張する方は一定数いらっしゃるなと感じます。そういう場合は、たまに針で緩めるのも有効だと思います。
調布の鍼灸治療院【春宵堂】についてはこちら ▼
西洋医学では原因が分からない不調を得意としています。